無我 つづき

無我という表現を理解するためには、仏教が説く無常という概念も

考察しなくてはなりません。

すべては無常です。あらゆるものはたえず変化しているからです。

何ものも連続する刹那(想像しうる時間の最小単位)にわたって

同じであることはできません。

二刹那というごく短い時間においてさえも、

みずからの同一性を維持できないのは、

ものがとどまることなく変化するからです。

みずからの同一性を固定する能力がないがゆえに、

ものは無我であるといわれるのです。

つまりものには絶対的同一性(我)がないのです。

固定的な同一性をもっていないがゆえに、

いまの刹那のAは、もはや前の刹那のAではないのです。

AがAではないとというのはそのためなのです。